Ending Note
桜井裕貴。あたしの1つ上の学年の先輩。
小学校・中学と同じで、あたしが先輩を好きになったのは小学5年のときだ。
在校生代表として出席した6年生の卒業式。
式が終わって退場するとき、男子はヘラヘラ笑っていたり、普段と対して変わりなかったりしていたのだけれど。
先輩は涙を堪えるように下唇を噛みしめ、うつむいたまま体育館をあとにした。
その日から、あたしはいつも、先輩の姿を探していた。
“卒業式で泣きそうになっていた男子”
それが先輩の最初の呼び名。
遅れること1年。あたしが中学に入学してから、先輩がサッカー部に入っているという情報を得てからは、呼び名がさらに長くなった。
“卒業式で泣きそうになっていた、2年のサッカー部の男子”
中学で知り合った親友の奈瑠美が、「小学校から一緒なのに名前すら知らないなんてヘン!」と呆れて、先輩の名前を調べてくれたおかげで、あたしは長い呼び名からようやく解放された。