Ending Note
たぶん、あたし今、棒読みになっていたかも。
「……あの、先輩。今日は本当にすみません。昼休みといい、母のことといい、いろいろ迷惑かけちゃって」
「昼休み?」
「……はい」
あれ? ひょっとして覚えてない?
……まじですか。
裕貴先輩のなかの、あたしの印象ってかなり薄いんだ。
「あーはいはい、あのサンドイッチ?」
「あ、そうですそうです」
思い出すのに時間は要したけれど、一応覚えていてくれたようでホッとした。
“昼休み? 俺たち会った?”なんて、きょとんとした顔されたら、ちょっとだけショックだし。
「気にするなって」
にこりと笑う裕貴先輩に、胸がどきんと大きく波打つ。
この笑顔、あたしにだけ向けられているんだ。
遠くから見ているだけだったのに、今は普通に話をしながら一緒に歩いているなんて。