Ending Note
「こんにちはー」
裕貴先輩が声をかけると、渡辺さんの奥さんの目の色が瞬時に変わる。
「あら~、裕貴くんじゃないの~」
思わず吹き出しそうになる。
この人のこんな猫なで声、聞いたことがない。
「栗沢さんちのスイカ、受け取りに来たんですけど」
「え? 栗沢さん? あらっ、千春ちゃんも一緒?」
裕貴先輩の後ろに隠れるようにして立っていたあたしを目ざとく見つけた渡辺さんの奥さんは、不思議そうな顔をしている。
「え、2人はお友達だったの?」
「ち、違いますっ!! 同じ学校の先輩と後輩ってだけです!」
渡辺さんの奥さんとはなるべく接触したくなかったけれど、“友達”にすらなっていないあたしたちの関係を誤解されるのは我慢ならない。
「あぁ、先輩と後輩ね」
……いやだよ、このおばさん。なんだか嬉しそうですこと。