Ending Note


「でも先輩は、あたしの名前、知っています?」



もう一度、確認したかった。



ママがあたしを保健室に呼び出すときに告げた、“栗沢千春”という名前。

それを裕貴先輩がちゃんと頭のなかに記憶しているのか。



「栗沢千春、だろ?」



ちゃんと覚えていてくれたことに、あたしは泣きそうになってしまう。


ずっと見ているだけだった裕貴先輩に、やっとあたしという存在を知ってもらえた。



「先輩は、桜井裕貴」


「なんで知ってるんだよ」


「だって、女子のあいだで人気ありますもん、先輩」



本当はね、ちがう。


“だって、ずっと好きだったから”


そう言えたらいいのだけれど、今はまだ、そういう状況じゃない。



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