Ending Note
「今日のお弁当、なんで作らなかったの?」
「えー? 裕貴くんの写真をあんたのスマホからママのスマホに転送して、顔をじっくり覚えていたの。作戦決行のためにね」
「……なんて親だ。娘の好きな人の写真を自分のスマホに転送するとか」
「顔を覚えたり、作戦会議の続きをしたり……、結構忙しかったのよ、ママ」
ママはうんざりしたように溜息をつくけれど。
あたし、そんなお願いごと一度もしていませんが。
だけど――……
「ありがとう、ママ」
今日のママの行動がなかったら(嘘をついたのはいけないけれど)、あたしは明日も……下手すればずっと、裕貴先輩を見ているだけだったんだろう。
「どういたしまして、大切な我が娘よ」
ふざけたように笑うママの背中をギュッと抱きしめると、ママの優しい匂いが鼻をくすぐった。