不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「まさと…

まさと?」

私は気怠い躰を無理に動かしてベッドで起き上がった。

とっさに首までかかっていたかけものがはだけて、

自分が何も身にまとっていないことにはたと気がつく。

私が感じたことは、夢だったのだろうか?

それとも現実に起こったことなのだろうか?

久々に物思いを深くすると、どこからが現実で、どこからが幻覚なのか…

わからなくなる。


私は彼と何かを分かち合えたのだろうか?

私は彼を捕まえられたのだろうか?


ぼーっとそんな思考に囚われていたが、

あわててシーツを素肌に巻き付け彷徨う。

きょろきょろ周りを見回してみても、誰もいなかったから…

とたんに真っ暗闇の不安な気持ちがどっと押し寄せてきた。


そんなあられもない姿のまま、私は必死に狭い部屋をうろついた。

でも、いくら探しても彼はいなかった。

また絶望に包まれる。もう何度こういう気持ちを経験したのだろうか?

それでもその度になれることなんてなくて…

それどころか余計に辛さが増しているような気がする…



結局部屋には…

私以外、誰もいなかった。

誰かがいた痕跡すら見つけることはできなかった…

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