不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
綺麗な字が並んでいた。

今時携帯でもパソコンでもなんでも伝える手段はあるのに…

この人はいつもこうやって私に何かを遺していく…

瞼を閉じて視界をはっきりさせようと涙を拭った。


『僕の永遠であるほうちゃんへ…』

その手紙は予想通り、私にとって残酷な言葉で始まった。


『この20年、春にハルジオンをみるたび君の夢を見ました。

触れても抱きしめても所詮は幻。

そのむなしさに悶えながら生きてきました。

どうしても心残りで、もう一度だけ会いたかった。

どうしても未練を断ち切れず、その笑顔を、その声を

もう一度だけ胸に焼き付けたかった。なのに…

ごめん。』


やっぱり…

まただ。あの時と一緒。

また、彼は消えた。

おそらく二度と…

彼は戻っては来ないのだろう…


私は呆然と手紙を持ったまま立ち尽くしていた。

目の前の霞を必死に掴もうと取りすがっても…

彼の心も身体も結局は捕まえられなかった。


また視界がゆらゆらと揺れて、頬を涙がつたった。

2度目の拒絶。彼は別れを曖昧にしたりしない。

でも私がそれで別れたと自覚して前に進むには

あまりにも残酷な断ち切り方しかしない。

今度は立ち直れるのだろうか?


そこで…

目が覚める。



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