不条理な恋 理不尽な愛 (ベリカ版)【完】
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目が覚める。目が覚める?起き上がると私は裸でベッドに一人寝ていた。夢?
右の胸元には赤い痣。その痕を指で撫でた。頬を涙がつたう。現実?
しかし、そこはシングルでセミダブルではなかった。
寝室を出ようと少しだけドアを開けたら、そこは部屋ではなく廊下だった。
訳が分からずフロントに電話すると、
「おひとりでお泊りですよね?」
逆に聞き直され不審がられた。
何が起きたのか、何が現実で、何が幻で…
すべてがわからなくなった。
出張には来た。研修には出た。その後、高校時代の友人とお茶をした。
帰れなくなって、大希さんに瑞希を頼んだ。そして、泊まるところを探して…
そこまでは間違いなく事実のはず。問題はその後…
あまりにも全てがリアルで…
でも私は手紙を見た後に目覚めた。指で頬に流れた涙をぬぐう。
涙がつたったのは…
それだけは事実。
ミモザの花と手紙がテーブルに置かれているのに気づく。20年前を思い出した。
『僕の永遠であるほうちゃんへ』
私はそれ以上読めず、手紙を握りしめ、ただ茫然を立ち尽くしていた。
躰の赤い痣、手紙と花。昨夜…
何が?
それから翌朝、重い身体を引きずって始発の新幹線に乗り込んだ。
天気は快晴なのに、気分は最悪だった。