不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「すまない。疲れているのかもしれないから…

いったん寝室で仮眠してくる。それから食事をもらうから。心配しないで…」


いつもと違うシチュエーションに、彼女はこっちをすがるような目で見つめた。

不安なんだろう…

その気持ちはわからないわけではなかったが、

それでもそんなことに構える余裕がその時の自分にはなかった…

すがるような綺麗なその瞳に見透かされたくない汚い感情を隠す様に、

一瞬だけ合わせた視線をできるだけさりげなくそらす。

それから鞄を彼女に預け、逃げるように寝室に向かった。

パタパタとスリッパの音が自分の耳に響き渡る。

やっとのことで寝室のドアを閉め、そのドアに寄りかかってうずくまった。

行きどころのない怒りが込み上げてくる。

なんで今なんだ!?今になって何なんだ?

俺の中ではアイツは…

眞人(まさと)は…

鬼門だ。あいつが関わると、何もかもが思うようにいかなくなる…

上手くいかなくなるような気がする…

まるでヤツの掌に載って弄ばれているような気がした。

それはあの頃でも…

居なくなってからでさえ、長い間なかなか変わらなかった。

やっと…

やっとそれから抜け出せたと思ったのに…



「いまさらなんだよ」

俺はその感情を全て吐き捨てるようにつぶやいた。
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