不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「瑞希おいで、ちょっと話があるから」

私は瑞希を手招きした。

瑞希は嬉しそうにはにかんでソファーに座っている私のそばに来ると

膝の前に立ち背中を向け、顔だけこちらに向いて目で合図してきた。

「どっこいしょ」

私は瑞希を抱え、自分の膝の上に横向きに座らせる。

こぼれるような満面の笑みを私に向けて

「母さん」

と呼んでくれる。


結婚するまでも長かったが、そこから母親になりたいと望んでもかなわない日々は

本当に苦しかった。

治療を始めて1年ほどしてから徐々に私の精神状態が悪くなり、

大希さんにそれを感づかれ、1年ほど不妊治療を中断させられた。


再開して半年。

毎日家でどうしようもない不安に押しつぶされそうになりながら

暮らしていた私に大希さんは

「仕事に行ってみたら?」

と勧めてくれた。治療は経済的負担も強い。


子どもに関わる仕事がしてみたいと思った。

パートでいい。

子どもが出来たら仕事はやめよう…

そう思って始めた障がい児に関わる仕事に

いつのまにかのめり込んでいった。

フルタイムで働くようになり、半年が過ぎ、治療は続けながらも、

いつしか自分の子は無理でもこういう子どもたちのために

生きていくのもいいのかもしれない…
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