不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
大希さんの撫でていた手の指が髪に差し入れられ、ゆっくりとすき始めた。

地肌から、少し骨ばった優しくて長い指の感触が伝わる。

何度も何度も繰り返されるその行為は、

彼が私をなだめるときによくすることだった。

その気持ちよさに私は目を閉じて、大希さんに身を任せる…

耳を胸にあて、彼の心音を聞く。ドクドクという音を聞くと、

こうやって撫でられるとその間だけは少し不安な事を忘れられる。

大希さんに身を預けていれば、何も怖いものはないと思える。

「だから大丈夫だ。段々落ち着く。

もし、辛い気持ちがまた襲ってきても、

一度越えられたものは、何度でも越えられる。

前よりは経験値があるし、俺もいる。

ほのかが望むならあの時のように、ずっと傍にいて抱きしめててやる」

「ごめんなさい…」

「謝らなくていい」

「だって…」

「俺は自分がしたいからそうしているんだ。お前と一緒に居たいから…

俺の方こそ一緒に居てくれてありがとう」

それは私のセリフだといつも思う。

この人はずるい。女の欲しい言葉を知っている。

それを意識してか無意識でなのかはわからないが、

ここぞというタイミングで私に囁く…



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