不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
ただ私の中にはこれから起こることを考えると穏やかな気持ちには

なりきれなかった。

彼は絶対に今日あったことを追及してくる…

なし崩しやごまかしは通用しない…

それがいつなのかというだけで…


鞄を私に預けると、迷いなくまっすぐ家の中に入っていく。

私はその後に従いながら、リビングに向かう彼に

「あのぉ――――」

と声をかけた。

「すまない。とりあえずご飯とお風呂を先に済ませてもいいか?」

大希さんは、ネクタイをゆるめながら椅子に腰掛けてため息をついた。


仕事で疲れているのに、何私焦ってるんだろう?申し訳ない気持ちになり、

「そっ、そうだよね。ごめん。すぐする」

私はいそいそと、彼の食事の用意を始める。その間いつものような会話はなく、

お互いに無言だった。用意を済ませ、いつもならテーブルの反対に座るのだが、

そんな勇気もなく、TVの前のソファーに腰をおろしリモコンで電源を付け弄んだ。


この時間は瑞希の事や、今日あった話を私がおしゃべりして、彼は食べながら、

その話に頷いてくれる夫婦の楽しい時間なのに…

さすがに今日はお互いに話すこともなくTVの音だけが静かに流れていた。


そして、大希さんは黙ったまま食事を済ませて、浴室に消えて行った。
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