不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
深呼吸してから口を開いた。これは懺悔ではない。あった事実を言えばいい…

でもすべていう必要はないと自分に言い聞かせながら…

「研修が終わって道を歩いていたら友達に会った」

「友達?」

「学生の時の」

「大学?」

「高校だよ」

「誰?男?女?」

「女。名前は言ってもいいけど、大希さんの知らないひとだよ」

その通りだ。帰り道であった友達は高校時代の同級生で、

彼女も仕事でその場にたまたま居合わせた。



「それで?」

「再会して一緒に食事をした。色々話をして、楽しかったよ」

「どんな話をしたの?」

「同級生たちがどうしているとか、仕事の話とか、家族の事…」

比較的時間に融通の利く彼女は、私を近くの喫茶店に連れて行き、

そのまま長い時間話し込んだ。

でもそれだけではこの話を聞かれても身体はビクつかない…

そう、この後に私は…

「ふ――――ん」

疑わしげな返事だった。


「ただ1つ…

びっくりすることも言われた」

「どんなこと?」

「私は名前しか知らない子なんだけど…」

その話を思い出すのは少し辛かった。

私たちのような若い世代にもそういうことがあるんだなと思わされたことだから…

私の表情を見て心配そうに声をかけてきた。

「どうした?」

「その子、白血病であっという間に大学卒業前に亡くなってたんだって…」
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