不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
今まで声しか聞こえなかったのに、突然宙に眞人が漆黒のローブをまとい

何かを抱いている映像が現れた。

俺はそれに度肝を抜かれたが、元々訳の分からなかった奴。

この際何でもありなんだろう…

目の前で起こるっていることがあまりにも陳腐で、諦めにも似た気持ちになった。

『「大希、ほんとうにすまない。でも基本僕はこの世界には住めないんだ」』

『「住めない?」』

『「そう。だからこの子をよろしく頼むよ」』

そう言って眞人は抱いていたものをゆっくりと手放した。

光っているそれはゆっくりと落ちてきてベッドに眠っているほのかの上まで来ると、

お腹の中に吸い込まれて一度眩しい閃光を放つとあたりは真っ暗になった。

『「これで魂入れ終わった。

10年後にこの子だけに一度会いに来るからよろしく伝えといて。

じゃ、ありがとう」』

『「じゃって逃げるのか?おい、眞人?ありがとうって…

お前初めてそん…」』


ぷいっと眞人は消えた。あいつが人に「ありがとう」っていうなんて、

初めてのことだった…

ベッドに駆け寄ってほのかの腹部をさすったが、特に変わったことはなかった。

俺はそれからほのかの隣に潜り込み、彼女を抱きしめながら

頭の中で何度か眞人に呼びかけた。しかし…

それきり二度と答えはなかった。
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