不条理な恋 理不尽な愛 （ベリカ版）【完】

…理不尽

「落ち着いた？」

私の嗚咽と涙が少し納まったころに、彼が恐る恐る声をかけてきた。

顔を覆っていた両手を下ろして首をかしげ、

腫れぼったくなった目を何とか開くとそこには右頬にエクボを浮かべた笑顔。

遠慮がちにベッドの淵に腰かけている彼…

瞳の中に彼を捕えると自然と涙がこぼれる。


その姿を映すことをこんなに長年望んでいたのに…

それは今突然叶った…

それなのに涙越しなんてね…

だめだ私。崩壊している。


静かに彼の手が頬に添えられ、身体中に電気が走った。

そして、反対の掌で優しく頭を撫でられる。


そうだ、いつもこうやって私を撫でてくれたのは彼だったのに…

どうして忘れてしまったのだろうか？

どうして、もっと探そうとしなかったのだろうか？

私はさみしい気持ちにどうして負けてしまったのだろうか？


「どうして…

なんで…」

やっと落ち着いたときに出たのはそんな言葉だった。

「どうして？なんで？」

彼には私の言わんとすることが通じていないようだった。

「どうして…

いなくなったの。なんで、現れたの？」

もう一度言い直した。

彼はしばらく考え込むように黙っていたが、

私をふわっと抱きしめて優しくこういった。