不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「あれ以上望んでもこの世界にいるのは無理だったから…

例えどんなに一緒にいたくてもね。

今回は僕がほうちゃんを呼び寄せてしまったのかもしれない。ごめん…」

最後の言葉は掠れて聞き取りにくかった。謝っているようだけど…

抱きしめられたまま私は何と答えたらいいのかわからなかった。


『無理?呼び寄せた?』

昔からよくわからないことを言う人だったが、頭の中で繰り返してみても

言っている言葉の意味がやっぱり分からない。


「ねえ、無理ならなんで私とつきあったの?

どうして、私をかき乱して振り――」


「集中したいから少し黙っていてほしいんだけどいい?

ほうちゃんのデータ入手済んでない」


あくまでもマイペース。

そうだ、これが彼、大井眞人(おおい まさと)だ。

意味不明なことを言って会話がかみ合わないこともあった。

空気を読めない言動がよくあった。


それでも彼は人懐っこく、おおらかだった。

彼と一緒にいると、私の抱えている悩みなんて

たわいもないことのように思えた。

私は振り回されながらもそんな彼に魅かれたんだ…

20年の月日は記憶を美化する。

そんなわがままで理不尽な彼の言動なんてすっかりと忘れていた。

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