消えた同級生【玩具の女編】
「こらこら!」

「すみません、先生…」

どうやら看護婦らしい…

「君みたいに思春期の子にはそう思われてもしかたないね…」

医者は余裕で返した。俺の悪態を

「じゃあ大事な話をする前に、軽く昔話をしよう!」

医者はニッコリ笑って机に手を置いた。

「僕には歳の離れた姉がいて、高校生の頃には結婚して妊娠していた。たまたま夏休みで姉が家に遊びに来てるときに、事件は起こりました。」

俺は思わず聴き入ってしまっていた…

「僕と姉で留守番をしてるとき、姉が突然陣痛を起こしたんです。臨月よりまだ早い時期に突然…
男の僕には全くどうしていいかわからず、ただ救急車を呼ぶだけ
救急車が来て安心したのもつかの間、受け入れてくれる病院が無かったんです。」

俺は眉をしかめた。

「救急車の中で姉と僕はたらい回しです。ベットが無い、医者がいない、早産で生まれた危険な胎児を受け入れる設備が無い…そんな理由で危険な状態の姉は何時間も放って置かれました。僕の目の前で」

目の前の人間の温度が下がるのを、俺は感じた
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