消えた同級生【玩具の女編】
「…そ、それでどうなったんですか?」

医者は俺の言葉を聞いてゆっくり動いた。

そしてデスク横にある写真立てを俺に手渡した。

写真には優しく微笑む着物姿の若い女の人が写っていた。

俺は悲しい気持ちになり、思わず持つ手に力が入る。

「姪です!可愛いでしょ。今年成人式だったんですよ」

「はぁ!?」

俺は予想外の言葉に変な声を出してしまった…

…じゃあ…助かったんだ…

「隣町の大きな総合病院が受け入れてくれて、姉も赤ちゃんも無事に命を取り留めました。13番目の病院です。」

医者は遠い目をしながら微笑んだ

「姉を見てくれた先生がすごい先生でね、僕はあの先生に会って産婦人科医になろうと決めたのですよ。」

「そうか…」

人には歴史があるんだと実感していた。

「下手したら、彼女も同じ道をたどるかも知れません…」

「え?」

突然の言葉に俺は直ぐに反応できなかった。

「低年齢の出産は命の危険があります…」
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