消えた同級生【玩具の女編】
碧依は席に着くと、中央の後ろ寄りに座るあの少年をちらりと見た。彼の視線は机を向いている。



…彼を知ったのは蒼湖の告別式だった

私も父も立場上遠くから見つめる事しか出来なかった…

あの日は雨が降っていて、私達も参列者も傘をさしていたのに、彼はずぶ濡れでいた

今よりもずっと明るい茶髪で、前髪なんか鼻までかかるくらい長くてちゃらちゃらしたイメージだったけど、闇に染まって何も写してないような瞳は変わってない。

私達が参列できないように、この人もまた参列出来ない人間だ。


遠く離れていた私達の少し前で、泣きもせずにただじっと蒼湖の出棺を見ていたな…

「あいつ、蒼湖の……」

父が不愉快そうに彼を指差したから、よく覚えていたんだ…


私は彼から目を離し、前を向き直る

よりによって同じクラスか…






午前中の授業が終わった。クラスメイトの視線から逃げようと、学食を探すため教室を出たら後ろから肩を叩かれた。
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