消えた同級生【玩具の女編】
「はぁ?」

「ごめん。とぼけてるんじゃなくて、覚えてないの…記憶がないの…」

「…え?」

俺達はしばらく沈黙する…

「わからないの…相手が誰とか、自分がどうなったとか…」

「…」

「たまに夢に出て来るのは、黒い影が不気味に笑ってるの…そして…」

上野がタオルを強く握った。

「その時の記憶だけスッポリ抜け落ちてるんだ…だから何にもわからない…覚えてない…
太門さんも教えてくれないし、その事には触れようとしない…
でも、もしかしてそれくらい、記憶を無くすくらい怖かったなんて…私…めちゃくちゃに…」

「悪い…もういいから考えるな…」

「私は汚れてる……」

「やめろ!!」

「…でも…」

「女は男によって汚されない!」

「さが…」

「お前は殴られたり、蹴られたりされたのと同じで暴力を受けただけだ。お前という人間が汚されたんじゃない。俺は今ならわかる…蒼湖は最後まで綺麗だった…俺に汚されなかった…」
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