消えた同級生【玩具の女編】
「上野…熈庵」

「いあん?」

「寺っぽくね?」

「寺っぽい!」

「最後に落飾の天子…」

「落飾…って、そんな奴この学校にいるのかよ!?」

「わからない…この人だけ…」

「政権争いに負けて、僧侶にさせられた天皇の子の事だぞ!?」

「わかってるって!多分そのままの意味じゃないのよ…」

「落ちる飾り…天子…てんし…天使…翼を落とした天使とか」

「飛べない天使?じゃあ、何かに傷ついた女の人?」

「わっかんねー、読んでみないと…」

ピーピーピー

二人で驚きながら振り向いた

「多分…乾燥機だ…」

「そっか…」

俺は乾燥機から服を出して上野に渡した。

上野は着替えて、俺達は家を出た。

「あの部屋で二人は過ごしてたんだね…」

「ああ…あの頃と何も変わってない」

「あの頃のまま?」

「ああ…」

「じゃあ、いつでも鮮明に蘇るね…」

「…ああ」

本当は全部が全部思い出せなくなって来ている…

時間が経つにつれ、記憶が風化していく

人間は残酷だ…
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