消えた同級生【玩具の女編】
「…そうですね…きっと…」

太門は一度目を閉じてゆっくり目を開ける

「あの日、朝早く星子の電話で起こされた。星子に頼られたのは、あの日が初めてだった…
もっとも、アイツは俺が麻薬捜査課だと知っててかけてきたんだけど…」

あの日、それは俺が警察に行ってる間なんだろう…

寒河江は黙って太門の顔を見ていた。

「俺は驚いた…自分の担当する捜査の被害者が、自分の娘だったなんて…
俺は絶望したよ…、弟も死んだ事件が、次は娘だ。死神が俺に罰を与えてるんじゃないかって思った…
でも、自分より取り乱す星子を見て、何とかしなきゃって考えた。

まず、警察病院に転院させてから、仲間と話し合った。アレの犠牲者は全員が廃人になる…蒼湖だって例外じゃない…しかも、かなりの量が検出されてる。絶望的だった…」

太門は金網から遠くを見つめる

寒河江は黙ったまま、悲しい父親の姿を見ていた。

「一週間後、蒼湖は目覚めた。星子と大喜びだ…だけど、もう話す事も動く事も出来なかった。例外なく、廃人になった…」

蒼湖…

寒河江が涙を堪えて俯いた
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