見栄っ張り症候群【完】
見栄っ張り
「あほだな」
一刀両断。
鼻緒の切れた下駄、赤くなった足の指、浴衣の裾にこびりついた土、それらを見て尚、そいつはせせら笑う。
「慣れない格好するからだろ」
私の住む田舎町最大規模の祭りで、人がごった返す道のど真ん中、何かの拍子にこけてそのまま立つ機会を失った私を、人々は迷惑そうに避けていく。
痛む足を庇いながら、やっとの思いで立ち上がれば、極自然に大きい手が差し出されたので、それを取り支えにして道の端へよけた。
下駄を右手に握り締めて、石段の上に座り込む。
祭りの提灯によって照らされないその場所は薄暗く、さっきまでガヤガヤとうるさかったグループの声も、ステージの歌も遠くに聞こえた。
「あーあ、可哀想に。痛そう」
擦りむいた手のひらの傷のことを言っているのか、慣れない下駄に傷つけられた足を哀れんでいるのか。
トータはしゃがみ込み私と視線を合わすと、にやりと笑う。
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