見栄っ張り症候群【完】
「いけそうって……。ガラスでもあったらどうすんだ。怪我すんだろ」
「だってしょうがないじゃん。駅まで遠くないし、歩けるよ、私」
「そういう問題じゃねえだろー?」
「でも、もう祭りは回れないかな……。トータは適当に友達見つけて、まだいていいよ。私、一人で帰れるから」
「かっわいくねえ、マジ」
「足、離して」
「あ、おいバカ。暴れんな」
言っても離そうとしないトータに対し、無理やり足を振り回せば彼の長い指は外れ、私の足はようやく自由になる。
あー、ドキドキした。
あと一回でもトータの肌が触れたら、私は今度こそ死んじゃうかもしれない。ドキドキして。苦しくなって。
足はもう掴ませないぞ、と即座にぴょんと立ち上がれば、
「いった……!?」
石を踏んだのか足の裏に激痛が走る。
「何やってんだよ、バカ」
呆れた声のトータの顔を涙目で見上げれば、そのバックにはちょうど、ヒューと息を吐き出すような音の直後、バン、破裂するような音と共に綺麗な花が咲いた。