見栄っ張り症候群【完】
そっと目を開ければ、トータはもう私を見ていなくて、また背を向けて少し離れた所に立っている。
「ほら、もうそろ終わるぞ、花火ー」
さっきと何も変わってない。無気力だけど、からかうような声。
だけど砂利と下駄のせいで傷ついたはずの足に視線を落とせば、私の足にはひとまわりもふたまわりも大きいサイズの汚れた運動靴が被せられていた。
「トータ?」
その名前を呼んで視線を下ろせば、彼は靴を履いておらず、私の方を見ない。
「……なんで? ……え、私、裸足で大丈夫だよ!? なにかっこつけてんの……っ!」
蝶々結びの紐を解いて靴を脱ごうとすれば、
「バカ、我慢しろよ」
さっきと同じ言葉を浴びせられる。トータは未だ、こっちを見ない。
「お前は黙っておんぶされてるようなか弱い女じゃねえだろ」
「……は?」
「けど、裸足で歩かせんのはあれだ、世間体がわりいだろうが」
「……」
「汚い靴で、我慢すれば?」
……なんて、言えばいいんだろう。