見栄っ張り症候群【完】
「……なに、悪い? 感動した気持ち、正直に伝えられないトータの方が子供じゃん」
「周りに便乗して適当に手え叩いてる方が子供なの」
「自分だって魅入ってたくせに。命を賭けて打ち上げてくれる人がいてこその花火なんだから、ちゃんと感謝の念を送らなきゃだめでしょうが」
「命って、大袈裟じゃねえ?」
「いいから、拍手」
拍手の音なんか、ほんとはとっくに止んでいたけれど、トータに促せば、彼は渋々ながらも数回手を叩く。
結局やるんじゃん。
「あはは、かわいー。かわいー」
笑えば、
「お前がやれっつったんだろ」
照れているのか、少し強めに頭を叩かれた。
だって、ほんとに可愛かったから。
「……じゃ、そろそろ帰っか」
んーっと伸びをして、石段に腰かけたままいた私の腕をトータは軽く引っ張る。
運動靴で踏んだ地面は柔らかく感じて、改めて下駄の不便さを実感した。
――それと、裸足の彼の足がやっぱり気になる。