見栄っ張り症候群【完】
さっき一瞬だけど裸足で立ってみてわかったけど、ここ、石が多い。そんなに大きくないけど、小さくもない微妙なラインのもので、よけるにも暗くて見えないし数もあるから、余計に痛い。
更に、駅に行くには神社を出なくちゃいけないわけで、まず人通りの多い明るい道を通らなきゃならない。
人に足を踏まれたり、砂利だってあるし、更にはマナーの悪い客が散らかしたガラスだって落ちてるかもしれない。そんなの危ない。
「……トータ、やっぱり靴履いて」
私が立つのを待って、歩きだそうとした彼の服の裾を引っ張って引きとめる。
「……んー?」
「裸足、危ないし、あんたが怪我したら嫌なの。私のせいみたいでさ。だから靴、貸してくれなくていい」
「ほんとお前、こういうときだけ謙虚になるよな」
「……何よ、私、いっつも謙虚でしょうが」
「この前嫌がる俺様の弁当からからあげとってったの誰だよ」
「私じゃない」
「お前だわ!」
み、耳が痛い。
もっともなトータの言葉にへらへら愛想笑いを浮かべれば、
「行くぞ、ほら歩け」
私の提案は無視され、腕を引かれ足を動かさざるを得なくなった。