見栄っ張り症候群【完】
「あ、ま、待って、巾着袋と下駄が……!」
「もう、さっき拾っておいた」
「え」
私の腕を掴んでいない方の手には、確かに下駄と巾着袋が抱えられている。いつの間に。
「じ、自分で持つよ」
これ以上トータに負荷はかけられない。と手を伸ばすけど、あっさりスルーされて
「もう遅い」
よくわからない返答をされた。
「私の荷物は私が持つ……!」
「うるせえ。黙って歩けブス」
「だ、だからブスって言わないでよ……あたたっ」
腕は相変わらずトータに引っ張られていて、その歩き辛さったらない。
だけど一応私の歩幅には合わせてくれているらしく、そのペースが速まることはなかった。
「腕、離してほしいんですけど……っ!」
「お前、すぐ転ぶだろ」
「子供扱いしないでよ」
「子供だろー」
「私のこと子供扱いすんの、あんたくらいだからね!?」
引っ張られてるだけは癪だから、トータのTシャツに手を伸ばして、それを掴んだ。
そうすればこれが結構歩きやすくて、楽に進める。
……もしかしてだけど、気を使ってくれてるのかな。