見栄っ張り症候群【完】
「な、なに?」
「浴衣なんか着て、誰に女をアピールしてんのか知らねえけど、今の格好はないな、オマエ」
ケケケと笑うトータに、あんたにだよ、とは言えず
「トータがいるせいで、誰にも声かけられなかったの! せっかく浴衣着て、綺麗にしてきたのに」
なんて憎まれ口をたたく。
可愛くないあたし。
「バカやろー、お前なんかに声かける勇者いねえわ。むしろ俺だってオマエがいるせいで綺麗なオネーサンに声かけらんないんだろー」
「あんたなんか誰にも相手にされないっつーの!」
「お、あの子かわいい」
あたしの声を無視し、上機嫌で声を弾ませた彼の視線を追えば、
胸元が大きく開いたTシャツに、細く長い脚をミニスカートから惜しげもなく晒した綺麗な女の人に行き着いた。
……そうか、トータはああいうのが好きなんだ。私とは全然違う、ああいうのが。
と少し気分が下がる。