見栄っ張り症候群【完】
「……ごめんね」
「何が」
「私がトータの言うように、慣れない格好なんかしてきたせいで、あんたのこと、裸足で歩かせちゃって」
「うっわ、根に持つなお前」
「ち、違うの! そういうことじゃないって!」
はいはい。
呆れたように流すトータは、私の方を振り返らない。
「さっき言ったのはほんとだから。似合ってたから、浴衣。童顔チビはこういうとき得」
「……たまーに正直になるよね、トータ」
「おいおいおいおい、正直とかお前が言うな」
「いいじゃん、ほんとのことなんだから」
「これだからやなんだよ、ブスは。ちょっと褒めると勘違いして調子に乗る」
「うーるーさい!」
トータの服を思い切り引っ張り、彼の歩みを必死に止めた。
いきなり止まったせいか、後ろにいた中学生くらいのグループがぶつかりそうになって、私たちを避けていく。おっと、ご、ごめんなさい。
「なんだよ、いきなり止まんな。あぶねえだろ。足痛いのか?」
「ち、違う。そうじゃない」
「じゃあなんだよ」
「私、やっぱ下駄履きたい」
「バーカ無理すんな。俺は平気だっつってんだろ」
そうやってぶっきらぼうだけど、根は優しいの、知ってるよ。好きだよ、トータ。