見栄っ張り症候群【完】
「な、なな何いってんのお前」
「……好きって意味に決まってるでしょ、トータのことが」
「……マジ?」
「ま、マジだ」
トータが珍しく明らかに動揺してるから、こっちまでパニクってくる。
いいんだ、別に。ダメで元々だし。女として見られてないような気は、普段からしてたし。
ずっと好きだったのは、私だけだって。本当に、分かってたから。強がりとかじゃなくて。
この告白が、受け入れられなくてもいいの。ただ、伝えたかっただけだから。無性に言いたくなっちゃっただけだから。
振られても、多分、まだまだ好きでいる覚悟はできてるの。
「……」
「……」
長い沈黙の末、それに耐えられなくなったのは私の方で、放心状態のトータから下駄と巾着袋を奪い取った。
気持ちは伝えた。好きになってもらえる方法なんかわからないけど、これからはちょっとでも、トータの前では可愛くいたい。
屋台の隅によけて、トータから借りた運動靴の紐を丁寧に解く。