見栄っ張り症候群【完】
通りすがりの人たちが、私たちを見て不思議そうに去っていく。花火が終わったためか、帰っていく人が多いようで私たちは完璧道の邪魔だ。
早く歩こう、と提案しようとしたところで、トータが顔だけをこちらに向けて、妖艶に笑う。
「ほら、乗れよ」
「……へ?」
「特別にしてやるよ、おんぶ」
「……へ」
「したら俺は靴履けるし、お前は浴衣汚さずに済むし。一石二鳥ってやつだよな。俺ってあったまいー!」
「……」
得意げにうんうんと頷くトータに、
「い、いい! いい! 私歩けるから! おんぶとか恥ずかしいし!」
全力で首を振れば、
「お前がさっき自分で言ったんだろー」
と、呆れたような声が返ってきた。
……い、言った。確かに言ったけど。でも実際されるってなるとかなり恥ずかしい。あんなのは漫画の中だけで十分なんだ。ファンタジーだ。
「だって私、重いし。トータ細いから、すぐ潰れちゃうよ」
「バカ野郎。なめんじゃねー。ちび一人ぐらい背負えるわ。ほれ、試しに乗ってみろよ」
「い、いやだ。絶対無理。恥ずかしい」
頑なに首を振る私に、トータはぶっきらぼうに
「いいから乗れよ」
命令する。
でも、と尚も躊躇う私に、トータは肩を竦め、悪戯っぽく笑った。