見栄っ張り症候群【完】
「……どこ見てんの、最低」
「オマエにはないもん見てんだよ、……あ、なんかゴメンネ」
「……こちらこそ、なくてごめんなさいね」
「おいおい小春、お前のまな板は今に始まったことじゃねえだろー。らしくなく落ち込むなって。諦めんなって。信じればまだ育つって。あとひとカップくらいは上がるって。元気出せって」
「……」
そんな慰め要らない。むしろ悲しくなるからやめてくれ。ていうか、バカにしてるでしょう。
そう言わず無言のまま、トータの足の脛を下駄で思い切り蹴ってやった。
「――ってえよお前! 何すんだバカ!」
「トータがセクハラ言うからでしょうが」
「まじ容赦ねえなお前! 女のくせに」
「なに涙目になってんの、男のくせに」
「なってねえよ!」
足を押さえて悶える彼がおかしくて笑えば、
「笑ってんじゃねー、ブス」
ぺしりと頭を叩かれる。
トータを蹴ったせいではだけてしまった浴衣の裾を直し、ついでにと泥を払うけど、駄目だ取れない。せっかく、良い浴衣を買ってもらったのに。あーあ。あーあ。