見栄っ張り症候群【完】





「何やってんだ、危ねえな。つかひやあってなんだよ、普通きゃあだろ」




プッとバカにするように吹き出したトータに手首を引かれ、なんとかひっくり返らずに済んだけど、足は彼の大きな手に掴まれたままで、離してもらえていない。



危ねえな、って、あんたがいきなり私の足に触れたからびっくりしたんでしょうが……!


文句を言おうにも、いきなりの出来事と触れられた足が熱を帯びていくのとでパニクって口がうまく回らない。




「な、なん、……は、はな、離してよ!」


「うわー、昨日雨だったもんな。転んだ時か? 泥取れねえじゃん」




なんでそんな平然と……。




彼が浴衣の裾にこびりついた泥のことを言っているのはすぐにわかったけれど、足を持ち上げられていることがこっぱずかしく、

「離してよ」

震える唇で必死に訴えかける。



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