見栄っ張り症候群【完】
「何さ、ケチ、良いじゃん、可愛いの一言くらい言ってくれたって」
「勘違いしないでくれるかな、可愛いとは言ってないからな、俺」
「似合ってるって、可愛いってことじゃないの?」
「乳もくびれもない寸胴体系な童顔ちゃんには、浴衣が似合うなっつー意味だバカ」
「素直じゃないなー」
「ハイハイ、可愛いよ。乳もくびれもない寸胴体系な童顔は浴衣似合うからな。ハイハイ、可愛いよ」
ひねくれ者め。
適当にあしらうトータに唇を尖らせれば、ようやく乱暴に手を離され、足が自由になる。のも束の間で、今度は下駄を履いていない方の足を持ち上げられた。
また変な声が出そうになったけれどそこはなんとか堪え、
「こ、今度はなに!」
どきどきしつつ、叫ぶように言えば、
「どうすっかなー。下駄。壊れたんだろ?」
ひとり言のように言うトータと、目が合う。