見栄っ張り症候群【完】



「……う、うん」


「どうすっかなー、直せっかな」


「トータには無理でしょ、不器用だもん」


「うるせえよ。つか、直したとしてもお前歩けねえだろ」




親指と人差し指の間を無理やり開かれ、

「痛い痛い! 何すんだばか!」

「あーあ、赤くなってる。無理すっから」

傷を見てくれたのはわかるけど、限度ってものがあるでしょうが。裂けるわバカ。




わりーわりーと笑うトータを見れば、わざとやってるんじゃないだろうかと疑いたくもなる。




「いいよ、こんくらい。最悪素足でも歩けるからさあ」




トータの手から下駄を奪い、切れた鼻緒をしげしげと眺めてみるけど、いかんせん。トータと同様私は不器用だ。直せる気がしない。


ていうかこれは素人の手でも直せるものなのだろうか。



……しょうがない、素足で歩くかあ。周りの目が気になるけど、そんなこと言ってる場合じゃない。駅まで我慢しよう。




どうせなら両方裸足になっちゃえ、と鼻緒の切れていないほうの下駄も脱いでしまえば、満足な解放感に

「お、いけそういけそう」

明るい声が出た。




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