吸血鬼が幽霊になって何が悪い!
厳しい条件を付けて代価を払わせるやり方は、あの執行官の底意地の悪さからくるものなのかもしれない。
あの執行官に一泡拭かせてやりたい!
欲望は頂点だが、対抗処置はなにも浮かんでこない。
父親が娘の腕や脚を適度に濡らしたタオルで拭き始めたとき、おれに質の違う欲望が鼻腔を通じてふくらんできた。
「ちょっと出かけてくる」
翔也にひと声かけて病室を出た。
返事してくれたのか、頷いたのかも確認せず、駆け足で廊下を走る。
一階の救急外来処置室。血のニオイは確かにそこからだ。救急車の音は確認済。大量出血の患者が運ばれてきたのならラッキーだ。