吸血鬼が幽霊になって何が悪い!


女の方は頭に大きなサングラスをのせ、彼氏が病院に運ばれているというのに安っぽい個性に浸っている。


男は血の気があまり余って元気そうだし、執行官の出番は考えられず、痴話喧嘩がエスカレートして女の方が刺してしまった迷惑な患者なのだろう。


血のニオイに誘われてきたが、こんな奴の血を吸うのかと思うと飲む意欲が失せ、吸う価値がないように思える。


男の腹に口をつけてチュウチュウ吸う姿も想像したくない。


喉が焼けるほど飢えてはいないし、まだ我慢できる。大丈夫だ。暗示をかけるように自分自身に問いかける。


「痛ぇ~、てめぇ~覚えとけよ!」
男は上半身を起こして女に掴みかかろうとする。ぶり返す痛みに腹を立てている。

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