吸血鬼が幽霊になって何が悪い!
「そうか」
執行官は目尻を下げた。
「そいつの言いなりになる必要なんてないぞ!」
「あなた誰?吸血鬼?」
セイラはおれの足元からシルクハットの先まで舐めまわすように見てから訊く。
「彼のことは気にしないでください」
執行官はセイラの目の前に立ち、おれの存在を隠す。
「記憶の機能はいらないです」
セイラは真っ直ぐ執行官を見て言った。
「早まるんじゃない。こいつは元通りの体にする力があるかもしれない。おれが脅してでも現実の世界に元気な体で戻してやる」
自分でも軽はずみな発言をしたと思った。