吸血鬼が幽霊になって何が悪い!
最上階に通じる階段の先のドアを開け、エアコンの換気扇や採光を取り入れる天窓がずらりと並ぶ屋上に翔也の姿はなかった。
建物がそれほど新しくないからなのか、コンクリートの凹みに所々水たまりができている。
昨日は雨が降ったのか……。
いまは使っていないと思われる錆だらけの貯水タンクが置いてあり、裏側へ周ると、おれの腹の底に溜まっていた塊が溶解した。
「翔也……」
びっくりさせないために静かに名を呼ぶ。
翔也は膝を抱えて座っていた。
おれの声に反応して笑顔でこちらを見た。
「来てくれるような予感はしてたんだ」