キミと生きた時間【完】
「……――で、あんたの望みはいったいなに?」
急に彼が振り向いたから、あたしは驚いて目を見開き、その場に立ち止る。
あたしが立ち止っている間に、彼は2、3歩歩きあたしとの距離を詰める。
「……追いかけてるのばれちゃってた?」
恐る恐る目の前にいる彼を見上げると、彼は小さなため息を吐いた。
「バレバレ。で、なんでついてきてんの?傘返しに来たとか?……そんなわけないか。返そうと思えばいつでも返せるのにずっと後ついてきてるし」
「ご、ごめん」
「あんた、いつもこういうことしてんの?」
「してない!!誓って今日が初めて!!」
「へぇ……。つーか、見ず知らずの男の後に簡単についていくなって。何かあってからじゃ遅いだろ」
「ご、ごめん」
「だから、何度も謝るな」
あっ……。今、ムッとした。
宇宙君が露骨に嫌そうな表情を浮かべた時、ふいに頬にじんわりと温かい何かが伝った。
「……おい。何で泣いてんだよ」
「ご、ごめんなさっ……」
「だから、謝るなって」
目の前が涙で滲んで、彼がどんな顔をしているのか分からない。
だけど、その声からはわずかな焦りが感じられた。