キミと生きた時間【完】
「ふぅん……。あたし、実は昨日の夜見ちゃったんですよ~。駅前であなたと荒木さんが楽しそうにしゃべってるところ」
意味ありげに微笑む美奈子に、宇宙君は眉間にしわを寄せた。
「だったら、なに?」
ため息交じりに答える宇宙君。
宇宙君と樹里が一緒にいたという事実に頭の中が混乱して、めまいがする。
「まぁいいや。よかったら連絡先交換しません?」
スマホを取り出してにこりと微笑む美奈子。
「里桜ったらあなたのこと何にも知らないって言って隠すんですよ~。紹介してくれるっていっておきながら、心の中では嫌がってるんですかねぇ?」
あたし、紹介するなんて一言も言ってないのに……。
「だから、名前すら教えてもらってなくて。とりあえず名前、聞いてもいいですか?」
あたし、宇宙君の名前を知らないの。
本当だよ。あたし、教えてもらってない。
「あの、聞いてますぅ?」
美奈子が猫なで声で宇宙君に問いかけた瞬間、宇宙君は唇の端に薄らと笑みを浮かべた。