キミと生きた時間【完】

「どうしてそんな大事なこと、もっと早く教えてくれなかったの……?もし知ってたら、あたし……――」


震える唇を痛いくらいにギュッと噛みしめる。


口の中に鉄の味が広がる。


だけど、そんなのも気にならないくらいに胸が痛かった。



『焦げ焦げの卵焼き』


『足のちぎれたウインナー』


『汚い形の唐揚げ』


『こんなお弁当持って行って、あたしがどんな気持ちだったか分かる!?お弁当をバカにされてどんなに惨めだったかお母さんには分からないでしょ!?』


もし、お母さんの手が麻痺していると知っていたなら、


もし、お母さんを傷付けることになるって分かっていたのなら、


あんなこと絶対に言わなかったのに。


< 194 / 326 >

この作品をシェア

pagetop