キミと生きた時間【完】
あれはいつのことだろう。
周りの友達の多くは兄弟がいて、羨ましさからお母さんにお願いした。
『里桜も兄弟が欲しい~!!妹でも弟でもいいから。ねっ、いいでしょ?赤ちゃん産んで!?』
お母さんに頼み込むと、お母さんはあの時も笑っていた。
『お母さんは、里桜がいればいいの。あなただけをこの両手でギュッと抱きしめてあげたいから』
『えー、やだぁ!!妹か弟がほーしーい!!』
駄々をこねるあたしをギュッと抱きしめたお母さんは、あの時、どんな気持ちだったんだろう。
あたしを産み、右手に軽い麻痺が残ったお母さん。
もう一人産んだら、次には何が起こるか分からない。
だったら、あたし一人を大切に育てようと思ってくれたのかもしれない。
あたしだけを両手でギュッと抱きしめたいと思ってくれたんだ。