キミと生きた時間【完】
「バッグをひったくられるほんの少し前、学校に休学届を出してきたんだ。手術でしばらく休むことになるだろうから」
「そうだったんだ……」
休学届を出したのは分かったけど、どうしてあたしにムカついたんだろう。
内心ひどくショックをうけながらも、宇宙の話に耳を傾ける。
「本当は休学届じゃなくて、退学届を出したかった。どうせいつかは死ぬんだし、それが先か後かってだけだって思ってたから。俺、両親が死んでからばあちゃんと二人暮らししててさ。ばあちゃんにもこの体のせいですげぇ迷惑かけてるし、俺が死ねばばあちゃんの肩の荷だって下りるだろうって思ってた。だけど、やっぱり生きていたいって気持ちもあった」
「宇宙……」
「あの時、バッグをひったくられて内心ほっとしたんだ。このまま何もかも無くなってしまえばいいって。携帯も財布も学生証も……大切な物があの中に入っていたから。あれが無くなれば、死ぬ決心がつくって思ってた」
「だけど、あのバッグをあたしが……――」
「そう。見ず知らずの女子高生が俺の横を通り過ぎて大声で叫びながらひったくり犯のこと
追いかけだしてさ。余計なことすんなよって言おうとしたけど、言えなかった」