キミと生きた時間【完】
「どうして言えなかったの……?」
「だって、ありえないだろ。足とか手とかすげぇ震わせながら笑ってたんだから」
「あの時は必死だったんだもん……。バッグを取り返した途端、急に怖くなっちゃったけど」
「あの日の里桜のおかげで、俺は自暴自棄にならずにすんだ。今までは、いつ死んでもいいと思ってたけどもっと生きたいって思うようになったんだ」
『どうしてそんなになるまで必死になれるんだよ。普通、すぐに諦めるだろ?』
『諦められないよ。あのバッグの中にはあなたの大切なものが入っているだろうし』
宇宙はあの日のことを鮮明に覚えていた。
『それに、諦めたらそこで終わりでしょ?1パーセントでも可能性が残っている限り、あたしは犯人を追いかけ続けたよ』
「里桜にそう言われて、もう少しあがいてみようって思った。手術の成功率が10%に満たなくても、可能性は0じゃないって気付いたから」
宇宙はそう言うと、指先にギュッと力を込めた。
「一分でも一秒でも多く、里桜といたいんだ」
その声がかすれている。
「手術だって慣れてるし、死ぬのなんて怖くなかったんだ。それなのに……今は恐くて仕方がない」