キミと生きた時間【完】
このベンチへ来る前、宇宙がエレベーターから降りてきた時のことが頭をよぎる。
主治医から今後の手術の話をされると言っていた宇宙。
最悪のケースを思い浮かべそうになり、慌ててそれを頭から打ち消した。
「……――ねぇ、宇宙。明日、行きたい場所があるんだけど」
「行きたい場所……?ずいぶん急だな」
重たくなった雰囲気を壊す様に明るく言うと、宇宙はフッとわずかな笑みを浮かべた。
「急に行きたくなったの。ダメ?」
「ダメじゃない。じゃあ、明日そこへ行こう」
「……――うん」
このまま、ずっとこうしていられたらいいのに。
こんな時間が一生続けばいい。
あたしは小さく頷くと、ギュッと宇宙の手のひらを握りしめた。