キミと生きた時間【完】

このベンチへ来る前、宇宙がエレベーターから降りてきた時のことが頭をよぎる。


主治医から今後の手術の話をされると言っていた宇宙。


最悪のケースを思い浮かべそうになり、慌ててそれを頭から打ち消した。



「……――ねぇ、宇宙。明日、行きたい場所があるんだけど」


「行きたい場所……?ずいぶん急だな」


重たくなった雰囲気を壊す様に明るく言うと、宇宙はフッとわずかな笑みを浮かべた。


「急に行きたくなったの。ダメ?」


「ダメじゃない。じゃあ、明日そこへ行こう」


「……――うん」


このまま、ずっとこうしていられたらいいのに。


こんな時間が一生続けばいい。


あたしは小さく頷くと、ギュッと宇宙の手のひらを握りしめた。







< 252 / 326 >

この作品をシェア

pagetop