キミと生きた時間【完】

術前検査の結果はあまり好ましいものではなかった。


『成功率は10%を切っている』


医師は深刻そうな顔でそう告げたという。


宇宙は暗い顔はせず、『大丈夫』と笑っていた。


あの日、宇宙の表情が冴えなかった理由を知り胸が痛くなる。


おばあさんは時折言葉に詰まりながらも話してくれた。


「あの子はね、いつも言っていたの。いつまでも私に治療費や心配をかけるくらいなら、今すぐ死んでもいいって」


「宇宙がそんなことを……」


「でもね、あなたに出会って宇宙は変わったのよ。『俺、やっぱり生きていたい』って。そう言ってくれた時、本当に嬉しかったの」


おばあさんは目頭に浮かぶ涙をハンカチで拭うと、そっとあたしの手を握った。
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