キミと生きた時間【完】
3 逃げ出す勇気
「ねぇ、里桜のお父さんって化粧品会社に務めてるって前に言ってたよね~?」
学校に着くなり、美奈子とその取り巻きがあたしの席をぐるりと取り囲んだ。
「う、うん。そうだけど急にどうして?」
「やっぱり~?ねぇ、お父さんって化粧品のサンプルとか持って帰ってこないの?」
「たまにならあるけど……」
にこやかに話しかけてくる美奈子に警戒しながらそう答えると、美奈子はパァッと顔を輝かせた。
「ねぇ、今日の放課後って暇~?里桜の家に遊びに行ってもいい?」
「えっ?今日?」
「そう、今日。今日しか空いてないから。ね、いいでしょ?」
「でも……」
思わず視線を机に落として考える。