キミと生きた時間【完】

毎日、学校を終えて家に帰ると心が安らいだ。


お母さんの手料理を食べると顔がほころぶ。


お父さんとくだらない冗談を言い合うと楽しくて笑顔が溢れる。


だけど夜、眠ろうと目をつぶると動悸(どうき)がした。


その日にされた嫌なことがフラッシュバックのように脳裏をよぎる。


明日もまた、目の前で自分の悪口をいわれるんじゃないか。


体育の時間、誰かとペアになるようなことがあったらどうしよう。


みんなが2人組になっているのに、自分だけがぽつんとその場に取り残される。


『浅野さん!!早く誰かとペアになりなさい!』


先生の苛立つ声に生徒たちがこちらを見て、ひそひそと話し始める。


勇気を出して一人でいる子に声をかけても、ごめんと逃げられてしまう。


どうしてか理由を聞くと、必ず返ってくる答え。


「浅野さんと一緒にいると、あたしまで嫌われちゃうから」


申し訳なさそうにそう言った子にあたしは言い返すことすらできなかった。



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